THE BOOMの元ベーシストが語る、YouTube・音楽配信・サブスク……現代のミュージシャンの「自由」と「お金」を考える。

THE BOOMの元ベーシストが語る、YouTube・音楽配信・サブスク……現代のミュージシャンの「自由」と「お金」を考える。

■音楽活動は自由になったが……

山川浩正 ベーシスト Photo by Masao Sekigawa

自由にはなった。でも、「音楽で食べていく」、あるいは「音楽で成功する」というのは本当に難しくなったと僕は感じている。僕らがデビューした頃は、CDを出せば「当たる」可能性があった。実際に僕らが出した「島唄」という曲は150万枚を超えるヒットになったし、この曲で僕らを知ってくれたファンもいると思う。でも、いまはそんなヒットは期待できない。

だから今後、音楽はビジネスとしては構造を変えないと生き残っていけない時代になったのだと考えている。そもそも音楽業界は不思議なことが多い。

例えば、どんなに制作費がかかっても、かからなくてもシングルCDは1000円くらいで、アルバムは3000円。ライブのチケット代金はバラバラなのに、音楽の値段は同じだ。本来、音楽の価値は人によるものなので、例えば高音質のハイレゾ音源などはもっと高額で販売しても良いはずだ。僕だったらそういう高音質の音源で聞きたいと思うし、同じ意見の人もいるだろう。

ほかにも、仮にレコード会社に所属していれば行動に制限がかかる。YouTubeを始めたくても、事務所からストップがかかる。あるいはヒット曲を連発したとしても、バンドが解散してしまえば生活の保証はその時点で終わる。ヒット曲を出してもその後の生活は保証されないのも現実で、そうなると音楽だけで自由に生きていくことは難しくなる。

表現は自由になった。しかし音楽とお金の問題はまだいびつなままで、ミュージシャンの金銭的な問題は解決していない。そういう意味ではこれだけ自由に表現できるようになっても、まだミュージシャンは自由になれていないのかもしれない。

山川浩正(ベーシスト)

■プロフィール
2014年に解散したロックバンド「THE BOOM」の元メンバー。THE BOOMは「島唄」(150万枚)、「風になりたい」等のヒットで知られる。「島唄」は第35回レコード大賞ベストソング賞受賞。第44回、第53回、第59回NHK紅白歌合戦出演。現在はソロで音楽活動を続ける傍ら、ベーシストとして東京60WATTS、馬場俊英ライブツアー、大沢樹生ソロライブ、The Musical Day ~Heart to Heart~2023など様々なアーティストのサポートやアレンジャー、レッスン講師としても活動。自身が一型糖尿病に罹患していることから、病気・障害を支援する啓蒙、音楽活動も行う。1965年、山梨県生まれ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e4967d163429dc29813ee7409a054ae10e63eba

2023年3月31日 Yahoo!ニュース配信