現代の音楽に関する「数字信仰」について。(THE BOOMの元ベーシスト・山川浩正氏による特別寄稿)

現代の音楽に関する「数字信仰」について。(THE BOOMの元ベーシスト・山川浩正氏による特別寄稿)

■数字の価値観を手放してみよう

現状の音楽シーンが良いものなのか、悪いものなのか。それに関しての結論はまだ出せる時期ではないと思っている。ただ、「数字信仰」とも言える再生数至上主義は一度手放した方がより良く音楽を楽しめるのではないかと思うのだ。

再生数が少なくても、良い楽曲をつくっているミュージシャンは多数存在する。再生数にこだわらずに検索したら、あなたがもっと感動するミュージシャンと出会えるかもしれない。

そもそも、ミュージシャンはなぜミュージシャンを目指したのか。

例えば、こんな話がある。あるストリートミュージシャンが、路上で演奏をしていた。そのミュージシャンに観客が足を止めることは少なかったが、「目標は武道館」と言っていた。しかし、目の前のお客さんを感動させることができないのに、武道館という「数字」を目指すのはどうなのだろうか。

僕は、音楽を通じて自己表現がしたかった。そして、自分の音楽を通じて人を楽しませたかった。THE BOOMのデビュー前のホコ天時代にライブに来てくれる人が数名でも、デビューしてから武道館1万人集まってくれたときでも、その想いは変わらない。

もう一度、音楽とはなにか? それを考えるときなのかもしれない。

山川浩正(ベーシスト)

【プロフィール】
2014年に解散したロックバンド「THE BOOM」の元メンバー。THE BOOMは「島唄」(150万枚)、「風になりたい」等のヒットで知られる。「島唄」は第35回レコード大賞ベストソング賞受賞。第44回、第53回、第59回NHK紅白歌合戦出演。現在はソロで音楽活動を続ける傍ら、ベーシストとして東京60WATTS、馬場俊英ライブツアー、大沢樹生ソロライブ、The Musical Day ~Heart to Heart~2023など様々なアーティストのサポートやアレンジャー、レッスン講師としても活動。自身が一型糖尿病に罹患していることから、病気・障害を支援する啓蒙、音楽活動も行う。1965年、山梨県生まれ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7add7796e756bc56876500255274b34fb0d8b19e?page=3